アートの世界には、「プライマリー」と「セカンダリー」の役割があるらしい。
・プライマリーは、アーティストを新しくみつけ、育て、キャリアを形成する。いわば新人発掘の役割を担っている。
・セカンダリーは、プライマリーに発掘された、すでに価値のあるアーティストもしくは作品を取り扱い、商品にする。
往々にしてセカンダリーのほうが資産家らしい。育てる手間をかけず、必ず売れる商品のみを仕入れるのだから、まぁ直感的にもそりゃそうかという感じ。
残酷な構造だと、おれは思う。
最近、転職もそうか?と思った。
おれはシステムエンジニア8年目になるが、転職とは隣人みたいなものだ。上司が、同期が、部下が、すぐに転職をしていなくなる。おれ自身は転職をしたことがないので、隣人というか、対岸くらいかもしれないが。
世の中的にも、転職はあたりまえになった。(1日5回は〇クルートの CM をみてる気がする、YouTube でメッチャ流れてくる。)
で、そんな転職だらけの世の中では、「未経験者を取らない」企業が成立できてしまう。じっさいに、新人をとらず中途(即戦力)だけでやっている会社もあるそうな。
まぁ別に「新卒を採用しなければならない」という法律もないしなぁ。
すこし意地の悪い見方をしてみたい。
新人を採用して育てる企業よりも、すでに育った人材を中途採用する企業のほうが、人材のコストパフォーマンスは断然いいだろう。
新卒を採用した企業は、そのひとに仕事を教えなければならない。仕事を教え、失敗を許容して、何年もかけて一人前にしなければならない。(もちろんその間も給料を払う)
仕事だけであれば、まだいいかもしれない。最初はマナー講座からはじまる。なんと優しいこった。マザーテレサもびっくりだよ。
それがコストをかけて「経験者」を育てるってこった。
なのに、なのにだ。その経験者を、別の会社が中途採用する。
経験者を取られた会社は大打撃だと思う。
採用した会社は、ひとを育てるという一番わりに合わないことを他社にやってもらったあとで、その成果だけをかっさらうことができる。
ズルくないか?
「新人を採用して育てる」は、リスクもあるだろう。失敗もする可能性があるし、途中で辞められることもある。
2026年の現在「大学卒を採用しない」企業が過去最高の14.0%となったらしい。
2027年卒の新卒採用数が前年より「増える」と回答した企業の割合は11.5%、「減る」と回答した企業の割合は6.1%となり、新卒採用D.I.(「増える」-「減る」)は5.4%ポイントとなった。5年連続のプラス(「増える」超)となったが、2026年卒の7.8%ポイントからは2.4ポイント低下した。
出典:株式会社インディードリクルートパートナーズ.「ワークス採用見通し調査(新卒:2027年卒)」(2025/12/23)- https://www.works-i.com/surveys/item/251223_recruitment_outlook.pdf
「新卒採用を増やす企業が減り、減らす企業が増えた」ということだ。
この資料単独では、「企業が新卒採用を減らして中途採用へシフトしている」とまでは証明できない。けれど、おれは「そりゃセカンダリーのほうが得だよな」と邪推してしまった。
絶対セカンダリーのほうが得だよなぁーと思うのは、おれが経営者じゃないからなのだろうか。もしかしたら、おれの知らない新入社員を採用するメリットがあるのかもしれない。
(もし「別にメリットなんもないよ?」ってなら、新人採用をしている企業はスゲーと思う。頼むから商品を買わせてくれ。)
─── まぁ、おれは経営者になるつもりもないし、そんな器もないから、じつはそんなことはどうでもよかったりするのだが。
プライマリーだけでは、つくられた価値が広く流通していかない。セカンダリーだけでは、新しいものは生まれない。それは確かなことだろうから、いい感じのバランスで社会がまわってくれたら、それでいい。
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特にオチはないので、昔きいた小話をひとつ。
セカンダリーディーラーは、仕入れた作品を定価で販売することもあるが、ほとんどの場合はオークションを使う。
プライマリーディーラーの中には、このオークションに耐えられないひとがいるとのこと。理由は、オークションによって、アートの値段(価値)が頭打ちになってしまうのを見ていられないんだと。
落札されなかったアートは最悪で、それは「価値なし」の烙印になる。
しかも、アートに関してほとんど知識のないビッダーの、自己承認欲求によって価格が変動したりもする。「オークションはアートの墓場」のようなことを言っていた。
プライマリーにとっては、自分たちが育てたアートが殺されていくようなものだから、そりゃオークション嫌いにもなるよなぁと思ったものだ。
(10年以上も前にきいたこんな話を、ずーーーっと覚えている。)
だけど転職はそうじゃない、
企業に提示された年収が自分の価値の頭打ちではない。自分でまだまだ価値を上げられる。むしろ転職をくり返し、キャリアを重ねていくことができる。
そこは、アートの世界とは違うよなぁ、と思ったり、精進していく心がまえも大事だよなぁ、とこれまた他人事みたいに思ったりした。