E 文章術

文章がグッと読みやすくする修飾語の2大原則。

ここに 1 枚の紙があります。

  • 白い ”紙”
  • 横線の引かれた ”紙”
  • 厚手の ”紙”

 

上であげた 3 つの修飾語を、ひとつにまとめて ”紙” という名詞にかかる文章をつくるとき、順序はどうすればいいでしょうか。

まずは順序のままに並べてみます。

白い横線の引かれた厚手の紙

 

───すぐに気がつくように、これだと「白い横線」の引かれた紙、つまり横線が白いことになってしまいます。修飾語の順序を意識しないと、このような「ねじれた」文章を書いてしまいます。

いそいで作成した文章であればなおさらです。

 

本記事では、文章を一瞬で読みやすくする修飾語の2大原則をお伝えします。結論、次のルールにしたがうだけで、文章は格段に読みやすくなります。

修飾語の二大原則

  • ①長い修飾語は先に、短い修飾語は後に
  • ②大状況・重要内容ほど先に

 

はじめに

修飾語の順序ついて、有名な文章読本からの 2 つの例文で解説します。

  • 古式蒼然とした透明な青いコップ
  • 日本列島の上空に花子の放った風船が小さな点となって消えていった

 

 

修飾語の2大原則

①長い修飾語は先に、短い修飾語は後に

この原則は、文の分かりやすさ・自然さを決めるための最も重要です。

次の例文があります:

正順

古式蒼然とした透明な青いコップ

この文章は、正しい修飾師の並べ方───「長い修飾語は先に」なっています。

  • 古式蒼然とした “コップ”
  • 透明な “コップ”
  • 青い “コップ”

 

これを逆順にしてみます。

逆順

青い古式蒼然とした透明なコップ

 

「青い古式蒼然とした…」で一度文章が切れてしまったはずです。このように、長い修飾語を後ろにすると、文章に負担をかけ、読み手を混乱させる恐れがあります。

 

--

 

こういうと、よく「修飾する側とされる側の距離を近くせよ」という論を信じている人から「主語・述語の関係がめちゃくちゃになる!」と怒られてしまうことがあります。

その点については『日本語の作文技術』の中で回答されています。

問題の本質は、いわゆる「主語・述語」関係ではないのだ。たとえば次のような例を考えてみる。

Ⓐ明日はたぶん大雨になるのではないかと私は思った。
Ⓑ私は明日はたぶん大雨になるのではないかと思った。

右の二つでは、Ⓐの方がイライラしなくて読める。なるほどこの場合は、いわゆる「主語・述語」がⒶの方が近いからわかりやすいともいえよう。では、次の例はどうか。

ⓐ明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した。
ⓑこの地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した。

この二例では、明らかにⓑの方がわかりやすい。しかしいわゆる主従関係からすれば、ⓐの方がわかりやすくなければならぬはずである。これは実は当然であって、「主従関係」などというものは、日本語の作文を考える時、百害あって一利もないのである。

本田 勝一『日本語の作文技術』P56 朝日文庫(1982年)

 

黙って「長い修飾語は先に、短い修飾語は後に。」すればよろしい。

 

 

②大状況・重要内容ほど先に

次の例文があります:

正順

日本列島の上空に花子の放った風船が小さな点となって消えていった

 

この文章は、原則①の「長い修飾語は先に…」の点からは三者平等です。

  • 日本列島の上空に “消えていった”
  • 花子の放った風船が “消えていった”
  • 小さな点となって “消えていった”

しかし、内容の意味するところが平等ではありません。例えば、「日本列島の上空」が全体の中で占める意味はもっとも重く、おおきな状況をとらえています。そこで、原則①が適用できない場合は、大状況・重要内容ほど先に並び替えます。

 

これも逆順にしてみます。

逆順

小さな点となって日本列島の上空に花子の放った風船が消えていった

 

明らかにまずい順序であることが分かると思います。急に「小さな点」が出てきて、後半になってようやく「風船が小さな点になった」ことが分かります。

 

 

逆順は「、」によって解消される

修飾語の順が逆だとしても、「、」によって解消することができます。また、主張したい内容を強調することができます。

テンというものの基本的な意味は、思想の最小単位を示すもの だと私は定義したい。マルで切れる文章は、これらの最小単位を組み合わせた最初の「思想のまとまり」である。(…)

なぜテンが思想の最小単位化。たとえば「逆順」(修飾語順の反則)の場合も、この定義から一つの重要な意味を読み取ることができる。すなわち、なぜ「逆順」にするのかというと、筆者がそのものを多少なりとも強調して提示したかったからなのだ。

本田 勝一『日本語の作文技術』P88 朝日文庫(1982年)

 

2 つの例文で確認してみましょう。

逆順だけどOK

青い、古式蒼然とした透明なコップ。

「青い」ことが強調されており、後続の文の「伏線」にすることができます。

 

逆順だけどOK

小さな点となって、日本列島の上空に花子の放った風船が消えていった。

「小さな点となった」ことを最初に書くことで、時間経過や状況を強調することができます。

 

句点はまったく使わないか、なんとなく「いい感じのところ」に打つ人がほとんどだと思います。このようなテクニックもあるので意識してみてください。

また、テンについては『日本語の作文技術』に、「テンの二大原則」が書かれています。本記事では原則のご紹介までで、詳細は省略します。

★テンの二大原則

  • 長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ。
  • 原則的語順が逆順の場合にテンをうつ。

本多勝一 著, 『日本語の作文技術』P104(朝日文庫、1982年)

 

以上です。

※本記事は、Qiita にも(ほぼ)同内容を掲載しています。

 

 

参考書籍

篠田 義明『通じる文章の技術』ごま書房(1998年)
本田 勝一『日本語の作文技術』朝日文庫(1982年)
木村 泉『ワープロ作文技術』岩波新書(1993年) 

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