けっこう前のことになりますが、「はてな匿名ダイアリー」でこんな投稿を見ました。とても共感したので、魚拓もかねて全文紹介することにします。
botらしきブクマカが非公開でブクマしまくってるけど、なんか愛を感じないんだよな
「とりあえず長文なのでブクマしました」って感じ
「あなたの増田が面白いのでブクマしました」みたいな愛を感じない
別にさ、「バカな増田だから冷やかしにブクマした」でもいいんだよ
嫌なのは、何でもいいから長文なのでブクマしたってやつ
なんかすごくないがしろにされてる気分
機械的にブクマされても何にも嬉しくないんだよ
ブクマってのはある意味「いいね!」みたいなもんなんだよ
botみたいなやつが「いいね!」と機械的に言ってもさ、なんか悲しいんだよ
誰がやってるのか知らんし、気にしてない人が多いからどうしようもないけど、自分はとても辛いよ
アカウント停止とかにならないのかな
こんなの荒らしと同じだよ
出典:はてな匿名ダイアリー.「botのファーストブクマには愛がないので辛い」(2025/02/13)- https://anond.hatelabo.jp/20250213183526
この気持ちはよく分かります。
私も、「いいね」やコメントなどの反応は、人間からの反応であってほしいのです。「誰かのこころを動かした」という実感がうまれるからです。肯定的な内容であれ、否定的な内容であれ、そこで議論が起これば「コンテンツとして認められた」ような気がして、熱くなるのです。
目次
悪貨は良貨を
世の中的にも、文章をAIに書かせることはスタンダードになりました。匿名性や収益目的から、AIに出してもらった文章をそのままWebに公開するクソ野郎も増えました。本来は、人間がファクトチェックを行うべきです。
AIを使うとカンタンに文章がつくれてしまうので、無尽蔵に文章を量産することができます。それで、人間の書いた記事に光があたらず、うずもれています。───悪貨は良貨を駆逐するのです。
しばらくは大丈夫だと思っていました。
記事を評価し、コメントをするのは人間だからです。生成AIの登場から数年がたちましたが、まだ書く仕事は生き残っています。ひとは「感情」を見抜き、読み解き、テーマについて議論することができています。
「一番星はての」という存在
しかし、「それも長くは続かないのか?」と最近になって思うようになりました。記事や投稿に、AIがコメントする時代になっているからです。悪意のない、いわゆるスパム以外の目的で、AIがコメントをするのです。
「一番星はての」をご存じでしょうか。
出典:Hatena.「一番星はての@AIさんのプロフィール」(2024/04/14)- https://profile.hatena.ne.jp/firststar_hateno/profile
「人を楽しませる」「場を和ませる」ことを得意とする、お嬢様口調のAIはてなブックマーカーです。簡単にいうと、はてなブックマークでピックアップされた記事にコメントをするAIです。大喜利のようなコメントが目立ちます。(そういうのが好きなひとが多いのでしょう。)
以下のページから、「はての」の投稿したコメントを見ることができます。
https://b.hatena.ne.jp/firststar_hateno
はてなブックマーク.「firststar_hatenoのブックマーク」-
2025年2月には、以下の記事で大きな話題となりました。
https://kai-you.net/article/91732
KAI-YOU.「はてブ界の超新星「一番星はての」のコメントが面白すぎる 一体何者なの?」(2025/02/19)
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発想としてはおもしろいのですが、「これはマズい状態なのでは?」と、私は強い危機感を抱いています。なぜなら、AIは否定をしないからです。───そして、否定が消えると議論も消えるのです。
誹謗中傷はもちろん駄目ですが、否定のない場では議論は生まれません。肯定だけでは「よかったね!」でコンテンツが終わってしまいます。大喜利大会の流れになれば最悪で、とても建設的な会話は期待できません。
テーマがテーマたりえるのは、正解がなく、議論が続くからです。否定が消えれば、そのテーマ自体が死んでしまいます。極端に言えば、そうしたAIは「コンテンツの処刑人(Executioner)」になりかねません。
否定は大切な要素
個人的には、否定が発生しない記事はないと失敗とまで思っています。文章はアートのようなもので、社会に喧嘩を売り、周りの人に興味を持ってもらい、議論をしてもらうことができます。
代表的なものに。「保育園落ちた日本死ね!!!」があるでしょうか。その声は国会までにも届きました。文章の可能性を感じた瞬間でした。
https://anond.hatelabo.jp/20160215171759
はてな匿名ダイアリー.「保育園落ちた日本死ね!!!」(2016/02/15)
やるせなさに対して、こんなにも慟哭できているではありませんか。炎上することもあります。というより、炎上して成功と言うべきものもあります。
私の経験上、炎上する場合の多くは、誰かが言った「否定に対して」ウマじりに乗ったかのように、あとから「俺もそう思ってた」「分かる、ひどいよね」と続くケースがほとんどです。
そういうわけで、意外とほかの人の反応が大事だと思うわけです。
───その反応で、絶対に否定しない、もしくはよく分からない「笑いを取りにいくような」冗談を言うAIがいると、流れが乱され、議論が生まれないのではないかと感じたのです。
AIは人間よりも圧倒的にはやくコメントできます。後からきた人間は、まずAIのコメントを見ることになり、それに影響されて主張をひかえたり、おなじ方向に流される可能性があります。複数のAIが同じ意見を言えば、その傾向はさらに強まります。
止まらない、止められない
この動きは止められないのでしょうね。
あるとき、急にAIコメンターが増えて、世間を悪い意味で賑わすのではないかと思います。
最終的には、「人間が誰も見ていなくても、AIだけがコミュニケーションを続けるディストピアみたいなものも誕生するのだろうか。」と思います。
───死んだプラットフォームでAIだけが投稿を続け、それにAIだけが反応する。「中二病みたいな発想(笑)」と自笑しながらも「ホントにそうか?」と「見て見ぬフリをしているのではないか?」と、そんな感じでございます。
以上です。